筑波大学編入体験記〜物理学類〜
※随時、読みやすく更新中
筑波大学編入試験の体験記はたくさんありますが、物理学類のは少ないので、将来物理学類を志望する後輩たちのために、ここに記しておきます。
プロフィール
きっかけ
大学では全てを教えてくれないので独学したいけど、そのモチベーションを院試まで持続できるのか、独学で本当に大学物理が身につくのか、といった不安を感じました。そこで、1年の夏休みに友人との会話で編入試験のことを偶然知ったのをきっかけに、とりあえず力試しに受験してみて、成功すれば専門的に物理を学べる環境に移れるし、失敗しても自分のやり方に反省点が見つかって改善できるし今後の自信になるだろう、と考えました。
準備
情報源は主にこの二つ。
・大学の先生、大学院、部活、サークルなどの先輩達からのアドバイス
・編入体験記
対策をしていく上で、
・大学生なら、不合格になった場合も考慮して秘密裏で試験対策をした方がいいでしょう。
・教科書については、授業で取り扱わなかった部分をマセマでカバー。問題集はマセマとサイエンス社で十分だと思います。余力があれば、共立出版の詳解シリーズをかじるのもいいと思います。
参考図書
教科書一覧
・マセマ「力学」「熱力学」「振動・波動」「電磁気学」
スバラシク実力がつくと評判の熱力学キャンパス・ゼミ―大学の物理がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!
- 作者: 馬場敬之
- 出版社/メーカー: マセマ
- 発売日: 2018/05/01
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スバラシク実力がつくと評判の振動・波動キャンパス・ゼミ―大学の物理がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!
- 作者: 馬場敬之
- 出版社/メーカー: マセマ
- 発売日: 2018/04/01
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スバラシク実力がつくと評判の電磁気学キャンパス・ゼミ―大学の物理がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!
- 作者: 馬場敬之
- 出版社/メーカー: マセマ
- 発売日: 2018/02/01
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・「振動工学」(藤田著、森北出版)
問題集一覧
・マセマ「力学」「熱力学」「電磁気学」
・演習 力学 (サイエンス社)
- 作者: 今井功,高見穎郎,高木隆司,吉沢徴,下村裕
- 出版社/メーカー: サイエンス社
- 発売日: 2006/09/01
- メディア: 単行本
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・基礎 物理学演習 Ⅰ・Ⅱ (サイエンス社)
基礎物理学演習 (1) ((ライブラリ工学基礎物理学 (別巻=1)))
- 作者: 永田一清
- 出版社/メーカー: サイエンス社
- 発売日: 1991/01/01
- メディア: 単行本
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・実戦 物理重要問題集 (数研出版)
受けた大学・結果
(理由)
・量子工学や量子情報に興味があるので、本当は応用理工学類に行きたかったのですが、そこは試験の難易度が理工学群の中でトップレベルに高く、数学の筆記試験対策もやらないといけません。大学の授業と並行しながら短期間で対策するなら、科目が物理だけの物理学類がいいと考えました。
・大学の編入試験は普通、高専生向けに実施しているものなので、他大学から学生を受け入れてくれるのはごく一部しかありません。しかも定員が少なく、かなり狭い門です。旧帝や地方国公立ではあまり見受けられませんが、筑波大学や神戸大学などでは一定単位数を所得した2年生以上の学部生の受験を認めています。
i. 1年後期
大学の試験やレポートが難しくなって、自車校にも通い始めたので、予想以上の多忙であまり進展はなかったです。とりあえず伸びにくい英語を中心に勉強しました。
物理【力学:二体問題〜剛体】
力学だけは終わらせようと、慣性モーメントを求めたり、回転の運動方程式を立てたりできるようにしました。
英語【TOEIC対策(文法中心)】
編入にはTOEICの結果を提出しなければなりません。少なくとも650~700あればいいと言われていますが、750点以上の人はほぼ確実に受かっているのが事実です。TOEICは大学1年生の間に3回受験しましたが、600点を少し超えただけで頭打ちになってしまいました。
ii. 春休み
時間に余裕があったので、熱力学と振動波動の攻略。
物理【力学:演習 / 熱力学:気体分子運動論〜熱力学第一法則 / 振動波動:単振動〜連成振動】
・熱力学の試験範囲はほとんど講義でやっていたので、ポアソンの法則の導出方法だけマセマで補充して、あとはひたすら問題演習をしました。
・振動波動で苦戦。マセマの振動波動が発売前だったので、頼れる文献がなかなか見つからず、解説や例題をひたすらググって調べました。振動の問題を解くには、微分方程式や線形代数、複素解析の知識が必要で、急遽、数学の勉強も始めることになりました。なんとか減衰振動、強制振動、連成振動までは理解して、それ以上の範囲には進みませんでした。
英語【文法・単語の補強】
3回目の試験で点数が下がったので、ここで英語の勉強は打ち切りました。半年かけても伸び悩んでいるのに、提出にギリギリ間に合う5月の試験までにさらに伸びるとは到底思えなかったのできっぱりと諦めました。よって、余った時間を物理にあてて高得点を狙うことにしました。
iii. 2年前期
物理【力学:熱力学 / 振動波動:演習 / 電磁気:マクスウェルを除く】
電磁気は大学入学以来勉強してなかったので、高校の教科書や重要問題集を使って大学受験レベルまで復活させました。しかし、ベクトル解析の授業が6月に終わるのを待たないと大学の電磁気は理解できないので、それを待っていては手遅れになると思い、ベクトル解析の知識が不要なところに範囲を絞って進めていくことにしました。電場や電位を微積分で解いたり、ファラデーの電磁誘導の法則や自己インダクタンスを微分形式で記述したり、微積分による電磁気の記述の仕方をマセマやサイエンス社の問題集で訓練しました。
iv. 本番直前
・重要問題集やサイエンス社の問題集で、総仕上げ。記述式の答案もしばらく書いていなかったので、重要問題集のような大学受験用問題集で練習しました。
・ギリギリまで問題演習に時間を注いで、余力があれば、難しくて読み飛ばしていた箇所に戻って勉強しました。前日には数値計算対策として公式や物理量を確認しておきました。
筆記試験
・とにかく暑い日で、午前中にかかわらず外の気温は30度を超えていましたが、教室はエアコンが効いていてとても涼しくて居心地がよかったです。ちなみに移動は駅からタクシーで行った方が焦らないし迷わなくて済むでしょう。
・受験生の服装は私服が半分でスーツが半分。ここは予想ですが、受験生の7割が高専生で3割が大学生、その7割のうち半分が筑波大学本命で、半分が他に併願しているようでした。
・受験者数は物理学類は14人、化学類は15人でした。試験の10分前には問題が配られます。下書き用紙は問題用紙とセットで回収されますが、その理由は次の日の面接でわかりました。
物理は大問が3つです。
問1 力学 極座標を用いた運動方程式や力学的エネルギーの記述
問2 熱力学 マイヤーの法則やポアソンの法則の導出
問3 電磁気学 3次元空間中の電気双極子の電位と電場を計算
・よりによって、「ここは出ないだろ」と山をかけて勉強しなかった箇所が問1と問3に出てしまって、問2の熱力学しかまともに解けませんでした。点数は5〜6割といったところでしょうか。
・終わったあとは廊下やバスで他の受験生と少し交流できたので、編入試験や次の日の面接試験についての貴重な情報を聞けるいい機会になりました。
面接試験
・受験者が多いところは午前の部と午後の部に分かれていて、物理学類も化学類も午後まで面接がありました。僕は午後からで、12時過ぎに大学へ向かって、控え室で1時間ほど待ちました。朝にホテルを出てから面接会場に移動するまでの間、アピールしたい内容をじっくり考えることができました。この日も猛暑でしたが、もちろん冷房が効いていたので、背広は脱いで敢えてクールビズで挑みました。
・面接試験の教室前まで移動して椅子で5分程度待機し、呼ばれたら入室。ノックしても返事がなかったので、勝手に入ったけどそれでよかったらしい。面接官が3人いて真ん中の先生が主に質問をしてきて、両脇の先生が追加の質問を色々してきます。
・どうやら採点はすでに終わっているらしいし、大学の成績証明書やTOIECの成績表などがフォルダーに入っていて、回収された下書き用紙もあって、そんな書類を見ながら質問をしているようでした。
・ここで前日に受験生と交流したことが効果を発揮しました。「以前、問題の解き直しをした受験生がいたらしい。」その情報を信じて、持ってきた問題集を参照しながらホテルで解き直して、面接直前にも確認しました。面接中に「昨日解き直してみたんですけど…」みたいに2回くらいアピールしたら、「せっかくだし、冷静に考えて解いてみて」と問題を渡され、後ろの黒板に回答しました。「うん、いいね。」とコメントされたのですが、筆記の出来がよくなかったので「昨日のはなんだったんだよ」みたいに思われてました。
・とりあえず「大学院に進学したい」「研究がしたい」「大学在学中にこんな勉強をしてきた」の3つをアピールして、一応は好感触になったと思います。
感想
1. ぜひ、他の受験生と交流してみてください。相手が貴重な情報を持っているかもしれないし、逆に自分がそういう情報を持っているなら、共有しましょう。努力してきた者同士、協力しあって情報交換するべきだと思います。そのおかげで、僕は筆記でボロクソだったのを面接で挽回できました。
2. 問題の演習量にしがみつかず、なるべくたくさんの公式や概念にふれ、教科書や参考書の熟読し、知識を熟成することに努めてください。大学受験のように狭い範囲を勉強してひたすら問題を解くのではなく、大学以上の試験では広い範囲を満遍なく勉強して問題は適度に解くのがいいでしょう。過去問をあてにしないほうがいいです。
3. 僕のように大学から大学へ編入する場合、それなりの高い目標や強い意志が大事です。モチベーションを持続する為に、仲間と飲んだり遊んだりしてストレスを解消するのも決して悪くない選択ですが、あまり時間が与えられていない場合、多少の犠牲を払うのはやむを得ません。その代わり、応援してくれる人々をとにかく大事にしましょう。
以上が約1年間の受験生活の様子です。この体験談を誰かが読んで、その人の人生を変える手助けがちょっとでもできたら嬉しいです。他にもたくさんの先輩方が体験記を残してくださっているので、その中の一つとして参考までに。質問などありましたら遠慮なくどうぞ!